■二次電子像と反射電子像(2)

以下に、いろいろな試料を用いて、同一視野を実際に8、13kVの二次電子像、13kVの反射電子像を観察して比較した結果を示す。

ツクシの胞子(13kV、二次電子像) ツクシの胞子(13kV、反射電子像)
図1 ツクシの胞子(13kV、二次電子像) 図2 ツクシの胞子(13kV、反射電子像)


前回観察したツクシの胞子を試料にして、加速電圧13kVの二次電子像と反射電子像を観察した。図1,2は低倍の二次電子像と反射像である。反射電子像では右側から照明を受けたような影がある立体的な像が得られている。特徴的なのは図2の反射像中、左部胞子の左側の下地に黒い影が見えるのに、右部の胞子の影は薄いことである。この視野のステレオ観察をして胞子の凹凸の様子を調べた。ステレオ観察法と見方は、タイニーキャラバンの日本顕微鏡学会での一般公開 in 札幌を参考にしてください。左右の試料傾斜角度は±7度にした。交差法と平行法の写真を用意したので、読者の方法で見ていただきたい。

胞子のステレオ像(交差法) 胞子のステレオ像(平行法)
図03a 胞子のステレオ像(交差法) 図03b 胞子のステレオ像(平行法)


ステレオ観察で分かったことは、左の胞子の頭は下地にほとんど接触しているのに、右の胞子の頭は四本の足に支えられ下地から浮いていることである。反射電子像で下地に近い左部の胞子は、その影が下地に映り、下地から浮いている右部の胞子の影はボケて投影されることが理解できる。このように反射電子像を観察すると、ステレオ観察をしなくてもその凹凸の様子(下地に対する高さ)をはっきりと知る事ができる。他方二次電子像は、いろいろな方向から照明を受けているように見える。次に左の胞子をさらに拡大して観察した。

左部胞子像(13kV二次電子像) 左部胞子像(13kV反射電子像)
図4 左部胞子像(13kV二次電子像) 図5 左部胞子像(13kV反射電子像)


球状と考えられる胞子の二次電子像では、球の左側から放出された二次電子も、検出器に取り込まれるので、満月のような像が得られている。他方反射電子像では、半月のような明暗の像が観察された。

胞子の拡大像(13kV二次電子像) 胞子の拡大像(13kV反射電子像)
図6 胞子の拡大像(13kV二次電子像) 図7 胞子の拡大像(13kV反射電子像)


さらに拡大像を観察すると、反射像では表面に散在する1μm以下の顆粒にも影が観察できた。この影からも顆粒が球状であることが予想できる。この事を確認するため、この倍率でステレオ観察をした。

胞子表面のステレオ像(交差法) 胞子表面のステレオ観察(平行法)
図8a 胞子表面のステレオ像(交差法) 図8b 胞子表面のステレオ観察(平行法)


やはり、胞子は球状であり、表面に付着している顆粒も球状である事が確認できた。 さらに拡大して、顆粒の表面構造を観察した。

顆粒の表面像(13kV二次電子像) 顆粒の表面像(13kV反射電子像)
図9 顆粒の表面像(13kV二次電子像) 図10 顆粒の表面像(13kV反射電子像)


約1μmの顆粒表面にもさらに細かい0.2μmくらいの凹凸がある事がわかった。二次電子像では、解像度は十分であるが、凹凸のコントラストが乏しい。他方、反射電子像では解像度は少し足りなくなるが、真横からの照明があるので凹凸による影が強調されて見える。 次にスギ花粉も観察してみた。

スギ花粉(13kV二次電子像) スギ花粉(13kV反射電子電子像)
図11 スギ花粉(13kV二次電子像) 図12 スギ花粉(13kV反射電子電子像)


反射電子像では、パピラと呼ばれる突起や外輪の影がはっきり分かる。二次電子像では突起の影部も明るく鮮明な像を示している。さらに高倍率で観察すると。

オービクル(13kV二次電子像) オービクル(13kV反射像)
図13 オービクル(13kV二次電子像) 図14 オービクル(13kV反射像)


表面には直径約0.5μmのオービクル(顆粒)が無数に付着している。このオービクルはコンペイトウのように表面に約100nmの突起がある。二次電子像では鮮明度がよく、その様子がよく分かる。反射電子像もコンペイトウ構造も認められる。簡易法の反射電子像であるが、かなりの解像度が得られる事が分かった。

次に金属を観察した。

ホチキス針(8kV二次電子像) ホチキス針(13kV反射電子像)
図15 ホチキス針(8kV二次電子像) 図16 ホチキス針(13kV二次電子像)


凹凸の段差の大きい試料として、ホチキス針の先端を観察した例を示す。図15,16は引きちぎられた部分で、金属が針山のようになっている。加速電圧が13kVの図では稜線が白く輝いているのが分かる。このような試料では加速電圧が高いほどエッジ効果が顕著になる。

銅グリッド(8kV二次電子像) 銅グリッド(13kV二次電子像)
図17 銅グリッド(8kV二次電子像) 図18 銅グリッド(13kV二次電子像)


次に示す試料は透過電子顕微鏡の試料支持に用いる銅グリッドである。二種類の加速電圧で撮影した二次電子像(図17,18)を比較すると、グリッドを形成する凹凸の大きくシャープな端像では、加速電圧が高い13kVの像ではエッジ効果が著しく出て白く光っている。しかし、表面地にある0.5μm以下の凹凸は8kVの像のほうがコントラストも良くはっきりと見える。この原因は、二次電子像と反射電子像(1)の図7に示した粒子の大きさと図6の加速電圧による散乱領域の変化との兼ね合いによると考えられる。すなわち散乱領域が凹凸の大きさや段差に比べて大きい場合は、エッジ効果は顕著でない。この場合は加速電圧13kVでは散乱領域が凹凸の段差に比べて大きいためエッジ効果が出ず、凹凸部のコントラストが小さいと考えられる。

銅グリッド(13kV反射電子像)
図19 銅グリッド(13kV反射電子像)


13kVでも図19の反射電子像では、凹凸の影がコントラストを作り鮮明に見える。

Tiny SEMでは、二次電子像の他に反射電子像も観察できる事が分かった。反射電子像は、表面の凹凸を観察するのに有効である。

試料位置を高くすると8kV程度の低加速二次電子像容易に得られた。低加速の方が表面の凹凸をより忠実に観察できる傾向にある事が分かった。今後さらに詳細を調べたい。   





タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

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