■ ハーブの匂い玉はどこに2(ラベンダー、ミントなど)

前回、雪の中から顔を出したハーブの一種であるローズマリーを観察し、葉の表面に、直径0.1mm以下の匂い玉(今回から袋でなく玉と呼ぶ)が沢山分布していることがわかった。この玉の中に精油が満たされ、そこから匂いの成分が気化して外に漏れ、心地よい匂いを発することが分かった。学術的には、この組織を腺毛と呼んでいる。今回は、他の代表的なハーブについても、匂い玉の存在を確かめることにした。



・ラベンダー

娘がベランダでハーブを育てている。それを送ってもらい、観察した。

ラベンダー・デンタータ 葉の形(上:表面、下:裏面)
図1 ラベンダー・デンタータ 図2 葉の形(上:表面、下:裏面)


図鑑を見たら、ラベンダー・デンタータである事が分かった(図1)。ラベンダーは日本では最もポピュラーなハーブである。このデンタータ・ラベンダーは葉がギザギザしていて(図2)、歯のようであることから、そのラテン語から名付けられたとのことである。

この葉の表面を光学顕微鏡で拡大して観察した結果を示す。

葉の表面 葉の表面拡大像
図3 葉の表面 図4 葉の表面拡大像


図3に示すように、葉の表面全体が綿毛でおおわれ、その中に小さな玉が散在している。図4の拡大像で直径約0.07mm(70μm)のガラス玉のような透明な匂い玉が認められる。前回観たローズマリーの匂い玉は白濁であった。成分が異なるのであろうか。
葉の裏面を観察した結果を次に示す。

葉の裏面 葉の裏面拡大
図5 葉の裏面 図6 葉の裏面拡大


葉の裏面にも綿毛の中に、多くの匂い玉が認められた。図4,6から、表面とほぼ同じ透明な匂い玉があることが分かる。
花びらにもあるかもと観察した。

花の先端 花びらの表面拡大
図7 花の先端 図8 花びらの表面拡大


図7は円筒型の花の先端部の写真である。先端には他より大きな花が咲いている。この花びらを取り光学顕微鏡で観察したのが図8である。なんと花びら表面にも同じような匂い玉が認められた。

まず葉の表面のSEM像を順次拡大して観察した。その結果を図9〜14に示す。

葉の表面SEM像 図9の拡大
図9 葉の表面SEM像 図10 図9の拡大


図10の拡大 図11の拡大
図11 図10の拡大 図12 図11の拡大


図12の拡大 図13の拡大
図13 図12の拡大 図14 図13の拡大


匂い玉は、ほぼ円形で、綿毛に保護されて分布している。円の直径は約70μmであり、その表面は比較的なめらかである。多少の凹みは真空中で変形されたと想像する。匂い玉の立体的な形を知るため、試料を約50度傾斜して観察した結果を次に示す。

斜めより観察 図15の拡大
図15 斜めより観察 図16 図15の拡大


斜めから観察すると、匂い玉は饅頭のように扁平した球状である事が分かった。付け根は見えず、葉の表面に密着しているようである。図15,16の匂い玉の周辺にキノコのような腺毛が多く認められた。匂い玉の成長中の子供ではないかと注目した。

成長中の腺毛 図17拡大
図17 成長中の腺毛 図18 図17拡大


図17,18は別の視野で、匂い玉の子供が多い。図18は成長中のキノコに非常に似ていて、柄の先に玉が成長している。この玉がさらに成長し、柄は埋もれて、図16のような匂い玉になるのであろう。

葉の裏面もSEM観察した。その結果を図19〜22に示す。

葉の裏面 図19の拡大
図19 葉の裏面 図20 図19の拡大


図20の拡大 図21の拡大
図21 図20の拡大 図22 図21の拡大


真空中で変形されたと考えられる多少の変形はあるが、表面と同じく、饅頭形であることが分かった。子供の腺毛についても同様に観察した。結果を図23,24に示す。

子供の腺毛 図23の拡大
図23 子供の腺毛 図24 図23の拡大


図24から、この成長中の匂い玉の直径は約20μmであり、その背後にあるさらに小さい玉の直径は約3μm程度であり、同じような形をしている。柄の径は3〜6μmである。



・ミント

次に観察したのは、料理や菓子でおなじみのミント(はっか)である。種類の判定がなかなか難しいのでホームセンターで求めたものを使った。その名前は、オーデコロンミントと書いてあった。高貴な香水の名前がついている。

オーデコロンミント
図25 オーデコロンミント


葉っぱを嗅ぐと、さわやかなミントの匂いがした。表面を光学顕微鏡で拡大すると。

オーデコロンミントの葉の表面 葉の表面拡大
図26 オーデコロンミントの葉の表面 図27 葉の表面拡大


葉の裏面 葉の裏面拡大
図28 葉の裏面 図29 葉の裏面拡大


少し見にくいが、両表面には、ラベンダーデンタータと同じように直径が約70μmの透明な匂い玉が分布していた。これがミントの匂いの素なのであろう。
葉の表面を拡大しながら観察した。その結果を図30〜33に示す。

オーデコロンミントの表面 図30の拡大
図30 オーデコロンミントの表面 図31 図30の拡大


図31の拡大 図32の拡大
図32 図31の拡大 図33 図32の拡大


匂い玉はラベンダーと同じで円形である。
図31の左上部に異常な構造が認められた。それを拡大したのが図34と35である。

異常構造 図34の拡大
図34 異常構造 図35 図34の拡大


図30の匂い玉の分布状態や図31,34,35から、この場所に匂い玉があり、何らかの衝撃で剥がれた痕跡だと考える。柄の部分が残っていることになる。
匂い玉の立体的な形状を知るため、試料を約50度傾斜して観察した。その結果を



試料傾斜して観察 図36の拡大 図37の拡大
図36 試料傾斜して観察 図37 図36の拡大 図38 図37の拡大


この観察から、オーデコロンミントの匂い玉も、扁平したきれいな饅頭形であることが分かった。

次に葉の裏面も観察した。結果を図39〜42に示す。

裏面の匂い袋 図39の拡大
図39 裏面の匂い袋 図40 図39の拡大


図40の拡大 図41の拡大
図41 図40の拡大 図42 図41の拡大


匂い玉の立体構造を知るため、約50度試料を傾斜して観察した。結果を図43,44に示す。

斜めからの観察 図43の拡大
図43 斜めからの観察 図44 図43の拡大


表面の匂い玉と同様に、扁平した球状である事が分かった。図44では柄部が少し見える。



・タイム

タイムは肉や魚の煮込み料理に臭み消しや香りづけに使われることが多い。用いたタイムはシルバータイムである。葉が斑入りであることからこの名前がついたようである。

シルバータイム
図45 シルバータイム


シルバータイムの葉の表面 図46の拡大
図46 シルバータイムの葉の表面 図47 図46の拡大


葉の表面を光学顕微鏡で観察すると、同じような匂い玉があることが分かった。しかし、玉は透明ではあるが、玉の周辺など厚みがある場所では、黄色く見えた。
葉の裏面を観察すると。

シルバータイムの葉の裏面 図48の拡大
図48 シルバータイムの葉の裏面 図49 図48の拡大


裏面にもほとんど同じ大きさの匂い玉が認められたが、全体に色が濃い黄色でオレンジ色をしていた。 透明に見えたラベンダーやミントとは精油の成分が異なるのであろう。図49から白い斑入りの部分にも同じように、匂い玉があることが分かる。
葉の表面を順次拡大してSEM観察した結果を図50〜55に示し、斜めから観察した結果を図56,57に示す。

シルバータイムの葉の表面 図50の拡大
図50 シルバータイムの葉の表面 図51 図50の拡大


図51の拡大 図52の拡大
図52 図51の拡大 図53 図52の拡大


図53の拡大 図54の拡大
図54 図53の拡大 図55 図54の拡大


斜めからの観察 図56の拡大
図56 斜めからの観察 図57 図56の拡大


以上の観察の結果、真空内で生じたと思われる凹んだ場所があるが、全体としては、ラベンダーやミントと同じく、扁平した饅頭形であることがわかった。
葉の裏面についても同様に観察した。その結果を図58〜61に示す。

シルバータイムの裏面 図58の拡大
図58 シルバータイムの裏面 図59 図58の拡大


斜めからの観察 図60の拡大
図60 斜めからの観察 図61 図60の拡大


裏面の匂い玉は、表面の玉とほとんど同じである事が分かった。



・カモミール

最後に、針状の葉であるカモミールを取り上げた。このカモミールは、ローマンカモミールである。
前のハーブはシソ科であるが、カモミールはキク科である。ローマンカモミールはリンゴの匂いがすると言われているが、嗅いで見ると、確かにリンゴのようなさわやかな匂いがする。

ローマンカモミール 葉の表面拡大
図62 ローマンカモミール 図63 葉の表面拡大


光学顕微鏡で拡大すると、図63で見えるように、針状の葉の表面に透明な匂い玉が認められた。大きさも約70μmである。
次に、図63の視野をSEMで観察した。その結果を図64〜67に、左端の視野を図68,69に示す。

図63のSEM像 図64の拡大
図64 図63のSEM像 図65 図64の拡大


図65の拡大 図66の拡大
図66 図65の拡大 図67 図66の拡大


別の視野 図68の拡大
図68 別の視野 図69 図68の拡大


いずれの写真も匂い玉を斜めから撮影していることになり、扁平した球状の玉であることが分かった。

以上、代表的な四種類のハーブについて、葉の表面の匂い玉を観察した。匂い玉はどれも直径が約70μmの少し扁平した球状で、饅頭のような形をしている事が分かった。色は透明なものが多いが、タイムは匂い玉の色が黄色くなっていた。精油の種類が異なるのだろう。
匂い玉の成長は、はじめ葉の表面から、キノコが成長するように5μm程度の突起ができ、その先端が球状に成長し、直径約70μmの饅頭形になる。このとき最初に成長した柄は玉に埋まり見えなくなる。匂い玉の中には精油が満たされ、それが少しずつ蒸発して心地よい香りを漂わせる。

ハーブはその香りが、香料として料理や部屋、風呂などに使われている。また薬草としても使われているようである。

カモミールに湧いた虫 ラベンダーに湧いた虫
図70 カモミールに湧いた虫 図71 ラベンダーに湧いた虫


図70、71はホームセンターで購入したハーブの葉の部分に虫が湧いているのを撮影した写真である。多分この虫はアブラムシの一種であろうが、びっくりした。ハーブは薬用に使われ、抗アレルギー力、殺菌力、鎮静力、などの効能が記されている。さらに匂いによって虫を寄せ付けないと言われているハーブだが、この匂いを好んで寄生する虫もいるのだ。今回の匂い玉の観察では、前回よりあまり変わった情報は得られなかったが、最後に意外な事を知った。

ここで紹介した匂い玉は、学術的には腺毛と呼ばれているが、名前に似合わない形をしているので、匂い玉と呼んだ。







                               -完-









タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

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